奈良芸術文芸サロン|歴史観光の佐保山茶論

奈良芸術文芸サロン|歴史観光の佐保山茶論
催し情報
 
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催し情報
An Evening Hymn 夕べの賛歌〜リュートと一体化する17世紀歌唱の妙技〜(開催 2019.6.8&9)
後援 奈良県、奈良市、リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパン

加藤佳代子(ソプラノ)

櫻田 亨 (アーチリュート)

佐藤豊彦 (ナビゲーター)



加藤佳代子の暖かく美しい声と、櫻田亨のガット弦のアーチリュートによるニュアンスに溢れたコンティヌオとの絶妙な組み合わせの響きの中に溶け込んで酔って頂けたらと思います。アーチリュートによる、これらの歌に関連したソロ曲もいくつか演奏されます。なお、演奏曲目の解説は元オランダ王立ハーグ音楽院教授佐藤豊彦が行います。


開催日時 2019年6月8日(土)、9日(日)共に開演14時(13時30分開場)

会  場 佐保山茶論 鶯鳴館   定  員 50名 ※要予約

料  金 3,500円/日 ※当日の受付でお支払願います。

◇お申込みはこちら 

お申込みの備考欄に申し込まれる開催日と人数を必ずご記入下さい。


◇プログラム

2019/6/8 Saturday
(イタリアの歌曲&リュートソロ)
Quel sguardo sdegnosetto – Claudio Mnteverdi(1567-1643)
あの蔑みの眼差し クラウディオ・モンテヴェルディ
Ohimé ch’io cado – Claudio Monteverdi
ああ、つまづき倒れる私 クラウディオ・モンテヴェルディ
La Claudiana Gagliarda(lute solo) – Pietro Paolo Melii(Venezia 1614)
ガリアルダ ラ・クラウディアーナ ピエトロ・パオロ・メリイ
Torna, deh torna – Giulio Caccini(1545-1618)
どうか戻って来ておくれ、私の幼子よ ジュリオ・カッチーニ
Belle rose porporine – Giulio Caccini
麗しい真紅のバラよ ジュリオ・カッチーニ
Ti lascio anima mia – Girolamo Frescobaldi(1583-1643)
我が魂よ、今こそ別れの時 ジローラモ・フレスコバルディ
(イギリスの歌曲&リュートソロ)
Clarona, lay aside your lute – John Blow(1649-1708)
クラローナ ジョン・ブロウ
Love Constancy – Nicholas Lainer(1588-1666)
変わることのない愛 ニコラス・ラニエー
Air & Hornpipe(lute solo) – Henry Purcell(1659-1695) arr. T. Satoh
エアと角笛 ヘンリー・パーセル 編曲:佐藤豊彦
Music for a while – Henry Purcell
つかの間の音楽 ヘンリー・パーセル
An evening Hymn – Henry Purcell
夕べの賛歌 ヘンリー・パーセル


2019/6/9 Sunday
(イギリスの歌曲&リュートソロ)
An evening Hymn – Henry Purcell(1659-1695)
夕べの賛歌 ヘンリー・パーセル
Music for a while – Henry Purcell
つかの間の音楽 ヘンリー・パーセル
Air & Hornpipe(lute solo) – Henry Purcell(1659-1695) arr. T. Satoh
エアと角笛 ヘンリー・パーセル 編曲:佐藤豊彦
Clarona, lay aside your lute – John Blow(1649-1708)
クラローナ ジョン・ブロウ
Love Constancy – Nicholas Lainer(1588-1666)
変わることのない愛 ニコラス・ラニエー
(フランスの歌曲&リュートソロ)
Entrée de Luth(lute solo) – Robert Ballard(Paris 1611)
アントレー第3番 ロベール・バラール
Cessè Mortels de Soupire – Pierre Guédron(ca.1570-ca.1620)
ため息をつくような人間をやめよ ピエール・ゲドロン
Goutons un doux repos – Michel Lambert(1610-1696)
楽しもう 甘美な安らぎを ミシェル・ランベール

◇プロフィール

加藤佳代子 Kayoko Kato
名古屋音楽大学、オランダ国立ズボレ音楽院声楽科卒業。同ティルブルグ音楽院古楽アンサンブル科にて学ぶ。ソリストディプロマ、教育者ディプロマ取得。グレゴリオ聖歌から現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、バロックオペラ「オルフェオ」、エールドクール、フランドル楽派宗教曲などでオランダ国営テレビ、ラジオに出演。リサイタル「小鳥のうた〜リュートソング」「ソプラノとチェンバロによるイギリスバロック音楽」「A.ヴィヴァルディ〜イタリアバロックの祝祭音楽」を開催。東海バロックプロジェクトオペラ制作委員会による あいちトリエンナーレ2016舞台芸術公募プログム公演バロックオペラ「ポッペアの戴冠」タイトルロールにて好評を博す。同公演は名古屋音楽ペンクラブ賞を受賞。モンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」、ペルゴレージ「スタバート・マーテル」他、古楽器との共演多数。東海バロックプロジェクトメンバー。


櫻田 亨 Toru Sakurada
日本ギター専門学校でギターを学んだ後、オランダ王立ハーグ音楽院でリュートを佐藤豊彦に師事。リュート、テオルボ、ビウェラ、バロックギター、19Cギターなどの撥弦楽器を幅広く演奏し、時代やその音楽にふさわしい使い分けを行っている。すべての楽器にガット弦を用いて歴史的な表現を引き出す演奏スタイルは世界でもまだ数少ない。ソリストのみならず、コンティヌオ奏者としてもその柔軟な対応力は多くの共演者から信頼を集めている。リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパン事務局長。「やすらぎのガット・7つの響き(Variety of Lute Collections)」が初のソロCD。2枚目の「皇帝のビウェラ・市民のリュート」はレコード芸術誌「準特選盤」。その後は、のすたるぢあレーベルから佐藤豊彦・佐藤美紀と共に「3台のリュートによるデュエット」CDを、ソロCDとして「パッヘルベル 恋人のため息」「テオルボの音楽」をリリース。これらのCDも「準特選盤」となる。2017年発売の三重奏CD「ネーデルランドのリュート音楽」が、「特選盤」に選ばれる。


佐藤豊彦 Toyohiko Satoh
世界を代表するリュート奏者として活動する佐藤豊彦は、1968年にスイスへ留学し、1971年に世界初のバロックリュートLPをスイスで録音してデビュー。1973年にはオランダ王立ハーグ音楽院の教授に抜擢され、2005年に退官するまでの30年以上、世界各国で活躍する数多くの後輩リュート奏者を育てた。1982年のカーネギーホールでのリサイタルは、ニューヨークタイムズに写真入で絶賛を博した。30枚近いソロLP,CD、そして数えきれない程のアンサンブルでの録音の中には1980年にオランダでエジソン賞、同年に文化庁芸術祭賞、1983年と2008年にはレコード・アカデミー賞など、多くの受賞がある。
作曲家としても世界各地の現代音楽祭に参加し、自作品によるCDも3枚ある。バロックリュート教則本を始め、リュート現代音楽カタログ、自作品や編曲集などの楽譜の出版物もある。2000年には「リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパン」の会長に就任し、特に日本に於けるリュート奏者、製作者、愛好家の普及に貢献すべく力を入れている。さらに音楽家のための禅茶道「楽禅古流」と気功「楽禅式呼吸法」を考案し、能楽を学び、伝統的な日本の精神文化との融合を目指して、現在も国際的に活動を続けている。1943年生れ。


◇CD「夕べの賛歌」の発売記念コンサートによせて  

元オランダ王立ハーグ音楽院教授 佐藤豊彦



 オランダで古楽歌唱法を学んだソプラノ加藤佳代子さんと同じくオランダでリュートを学んだ櫻田亨さんによる17世紀ヨーロッパの歌とリュートのコンサートです。過去半世紀近くオランダが古楽のメッカであったことはご存知の方も多いと思います。今では古楽は日本にすっかり定着しています。しかし、ガット弦使用のリュートと歌の組み合わせによるコンサートや録音は今までも稀にしか行われていません。ガット弦という自然の素材と人間の声との融合はニュアンスに富んだ暖かい、溶け合う響きがあります。これは、合成樹脂の弦との組み合わせでは作れないものです。
 今回のコンティヌオ(通奏低音)にはアーチリュートが使われます。これは普通のルネサンス調弦によるリュートに長い竿(=弓=アーチ)に張られた数多くの低音弦を持つ楽器です。主に17世紀に歌の伴奏などに使われました。コンサート1日目の曲目はイタリアとイギリスです。そして2日目はイギリスとフランスの曲目です。歌とリュートの組み合わせによる演奏は、単純に「歌と伴奏」と言う考えでは成り立ちません。歌い手がリュートの小さい音に耳を傾けながら、その中に溶け込んで一体になるように歌わなくては美しく作り上げることが出来ないのです。同時に聴く方もかしこまって受け止めるのではなく、加藤さんの暖かく美しい声と、櫻田さんのガット弦のアーチリュートによるニュアンスに溢れたコンティヌオとの絶妙な組み合わせの響きの中に溶け込んで酔って頂けたらと思います。アーチリュートによる、これらの歌に関連したソロ曲もいくつか演奏されます。
 櫻田さんにはすでに数多くのソロやアンサンブルのCDがありますが、コンサートでは豊富な経験のある加藤さんにとっては初めてのCD「夕べの賛歌」の発売記念コンサートでもあります。


◇演奏会場

佐保山茶論 鶯鳴館

鶯鳴館(二階建てで、2階席がございます。)が演奏会場になったのは2014年10月からの演奏会からで、それまでは同じ敷地内にある竹風亭(平屋建て)が演奏会場でした。なお、今年の9月に鶯鳴館の一部を改装しました。






武久源造式 バロック音楽の楽しみ (2019.3.23&24終了)
後援 奈良市

武久源造(フォルテピアノ、チェンバロ) 

ゲスト出演 山口眞理子(バロック・ヴァイオリン、チェンバロ)
 
使用楽器

        フォルテピアノ(ジルバーマン・モデル)
        チェンバロ(フレンチ・フレミッシュ・モデル)
        バロック・ヴァイオリン


現代最高のピリオド鍵盤楽器(オルガン、チェンバロ、フォルテピアノ等)奏者の一人で各種鍵盤楽器を縦横に駆使し西欧古楽を新しく革新的に今に甦らせる武久源造が「愛と戦い」、「自然と宇宙」をバロック音楽の演奏で語りました。武久源造の門下生でヴァイオリンと鍵盤楽器を駆使して新しい音楽を表現をすることに挑み続けている山口眞理子がゲスト出演することで演出に一層の光彩が放たれました。




お客様のご感想(アンケートより)

●スキタイ人の行進、音色の変化が効果的で劇的で素晴らしかったです。チェンバロの演奏でしか聴いたことがなかったので驚きました。以前から武久さんにはスキタイ人のような曲が合うと思っていましたが、もちろんバッハも素晴らしいです。シャコンヌ、最高です!久しぶりに佐保山茶論にお邪魔しました。武久さんも本当に生で聴けるチャンスは少ないので嬉しかったです。また佐保山茶論に来て頂きたいと思います。庭の小鳥たちも一緒に合奏してくれる会場はとても貴重だと思います。武久源造さんは演奏もお話もとても楽しいです。CDも持っていますが、生の演奏はつややかな音色で美しく感動しました。

●初めて聴いたチェンバロの独特のテクニックはすごく新鮮でした。

●演奏を聴かせていただき感謝です。こんななつかしい哀愁のある音楽があるなんて感心しました。これからもいろんなジャンルの音楽をよろしくお願いします。

●素晴らしい響きでした。

●とても音楽の解説が良かった。

●演奏家との距離感と音の響きがとても良かった。

●F.クープランの一連の曲を聴いていると絵が浮かぶようです。武久氏編曲によるバッハのシャコンヌはジルバーマンピアノのために作られたことがよく分かる演奏でした。アンコールで演奏された武久氏作曲のいろは歌は素晴らしいの一言。日本人の美意識が見事に体現されている。最後の一音が、鶴が飛び立つ瞬間のようにあざやか。音楽の感動は言葉に出来ないと思います。無理に言葉にしようとすると感動が壊れてしまう。今回の演奏を聴いて初めてそのように感じました。

●とても会場の雰囲気と音響、音楽、お話が良かった。心落ち着く雰囲気の中、いろんな音にワクワクしたり包まれたり、贅沢な時間を過ごさせて頂きました。ありがとうございました。

●とても演奏、お話、会場が良かった。

●ヴァイオリンと合わさった時に調べがとても変わるのが聴いていて楽しかった。

●全て(奏者、楽器、曲!!)が良かった。武久源造さんをこんな間近で聴けるなんてすごく感動しています。年末に謀大ホールでチェンバロの演奏を聴きましたが、やはりチェンバロにはホールが大き過ぎて今日のようなリアリティがイマイチでした。チェンバロという楽器の素晴らしさを再確認しました。ジルバーマンもおもしろい!!武久さんの演奏で聴くと両楽器ともハープのように聞こえてきて、ビックリしました。モダンピアノではとても出来ないですよね。アンコールのゴールドベルクのアリア、泣きそうになりました!!

●穏やかなタッチも激しい曲も良かったです。ジルバーマンの音色、ピアノともチェンバロとも違い、いい音でした。

●この規模の会場で聴けるのが大変有難い。武久さんの声とお話が大変好きです。お話を交えての演奏で一層興味深く聴くことが出来ました。初めて聴くジルバーマンピアノ、まるみのある音、音色が変化するところ、とても魅力的です。もっとこの楽器での演奏を聴きたいです。演奏はうまく言葉になりませんが、包容力?深く柔らかい広がりに引き込まれました。

●お話と音楽が合わさって分かりやすく、わくわくして聴けたのが良かった。武久先生の演奏は特別なものではなくて、お話の延長で当たり前のことなのだと感じた。フォルテピアノの音色がくるくると変化し、初めて聴いたけれど面白さが伝わった。一台で様々な表現が出来、バッハも思いを形に出来たのだろうなあと思った。

●とてもウキウキした気持ちになった。フォルテピアノ、すげー。

●武久源造先生のフォルテピアノの音色の美しさと不思議感そして先生ご自身、山口眞理子先生の美しいヴァイオリンの音色が良かったです。アンコール曲のいろはにほへとは日本の原風景、いえ東洋思想の原風景、万葉世界、佐保山、平城山世界をも含むすべてに通ずる美しさへの憧憬、繊細な感性の重なり深く心にしみ入りました。演奏の合間にお話し下さる武久先生の音楽世界(バッハの悲しみ、イエスの悲しみ、喜び、etc)をコンサート初の私達にお届け下さる深い思いに感動熱く致しました。明日の演奏会を又楽しみに。合掌。

●ゴルトベルクは武久先生のCDを時々聴いています。生で(アリアをアンコールで)目の前で弾いていただけて感動しました。アンコールの最後の曲(バッハ=武久 シャコンヌ)が情熱的で素晴らしかったです。お話もおもしろくて勉強になりました。

●昨日に続き素晴らしい演奏の時を頂きましてありがとうございました。音を通して武久先生の精神世界にすっぽり包んで頂きました。アンコールでのアクアベリターティス(真実の水)第3番の美しい音色(ヴァイオリンとフォルテピアノ)に先生の霊性に触れた思いがしました。武久先生の演奏の合間にお話し下さる事が何より嬉しゅうございました。是非是非またの演奏を心よりお待ち申し上げております。二日間珠玉の時を有難うございました。一緒に聴きに来た孫息子は早速練習希望曲に昨日の何曲かをピアノの先生に知らせていました。少年よ大志を抱いてと願います。贅沢なプライベートコンサートをありがとうございました。深謝合掌。

●バッハの頃の音楽の楽しみ方、フーガの意味など良く分かった。鳥の曲を演奏中、外で鳥が鳴いていた。

●武久先生が「古い音楽を演奏するためだけに古楽器を使うのでは不充分で、新しいことに挑戦してはじめて現代の我々が古楽器を使う意味が出てくる。」というお話をされ、それが印象に残っています。演奏技術も素晴らしい。最後は楽器が火を噴くんじゃないかと思うほどの熱演でした。

●2日間大変いい時間でした。こんなに精魂傾けて(!?)演奏に聴き向かったのは初めてです。今日はたくさん弾いて下さってありがとうございました。ジルバーマンピアノの音、大変魅力があります。また伺います。

●フランスの作曲家の音楽は装飾音がたくさんついていて典雅で美しいなと思いました。“年老いた伊達男と時代遅れの守銭奴”ずっと聴いてみたいと思っていたものが今日聴くことが出来て良かったです。お話を交えながらの演奏会、とても有意義で良かったです。
楽器の調律の場面もとても興味深かったです。ジルバーマンピアノの音色、とても澄んでいて美しく、素晴らしかったです。Bach、天上の音楽のようでした。

●コンセプトも選曲もお話も演奏も素晴らしく良かった!!です。初めての佐保山茶論でのコンサートで10年ぶりに武久先生の演奏を拝聴出来て感動のひとときでした。ありがとうございます!!感涙

●演奏家が間近で演奏されるのを聴ける演奏空間が良かった。フォルテピアノの音色は力強いが柔らかく広がりがあって今のピアノよりも豊かに思いました。

●ライブは良いですね。武久先生が作曲された曲(アクアべーリタス第3番)が好きでした。流れる音が心地良かったです。素晴らしい演奏会でした。

●ほんとうに感動しました。ありがとうございました。

●ジルバーマンピアノの音が良かった。あまり身体を動かさずにきっちり演奏されている印象でした。話が楽しかったです。


武久源造式 バロック音楽の楽しみ #1
「愛と戦いの音楽」
愛と戦い、それは、人間の行動の二大要素であります。それは、古今東西の音楽のテーマであり続けていますが、特に、バロック時代において、作曲家たちは、陰に陽に、このテーマに基づく名曲の数々を産みだしました。その中の代表的な作品をじっくりとお楽しみいただきました。
プログラム
1. F.クープラン:第14オルドルより恋するウグイス、第6オルドルより恋やつれ、神秘の障壁、田園詩
2.D.カステッロ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
3.J.クーナウ:聖書ソナタ第1番「ダヴィデとゴリアテの戦い」
(休 憩)
4.J.N.P.ロワイエ:スキタイ人の行進
5.J.P.ラモー:恋の嘆き
6.J.S.バッハ:適正律鍵盤曲集より前奏曲とフーガイ短調BWV889
7.J.S.バッハ:パルティータ第2番ニ短調BWV1004よりシャコンヌ(武久源造編曲)
(アンコール)
●武久源造:いろはにほへと
●J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲よりアリア

武久源造式 バロック音楽の楽しみ #2
「自然と宇宙の音楽」
我々の身の回りの自然と遠い宇宙、これらは、いつの世でも、人間の好奇心の的であり、夢の源泉であり続けました。バロック時代の作曲家たちは、それをどのように音楽に表したでしょうか。このテーマに沿って、様々な角度から選曲された作品をじっくりとお楽しみいただきました。
プログラム
1.J.C.ケルル:カプリッチョ カッコー
2.H.I.F.ビーバー:描写ソナタ
3.F.クープラン:第6オルドルより収穫祭・羽虫、第18オルドルよりティクトクショク、第13オルドルよりフランスのフォリア
4.J.P.ラモー:雌鶏 
(休 憩)
5.J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007よりプレリュード(武久源造編曲)、適正律鍵盤曲集 第2巻より前奏曲とフーガハ長調BWV870、第1巻より前奏曲とフーガハ長調BWV846
6.J.S.バッハ:2台の鍵盤楽器のための協奏曲BWV1061
(アンコール)
●武久源造:アクアヴェリターティス第3番
●J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲よりアリア
●J.S.バッハ:パルティータ第2番ニ短調 BWV1004よりシャコンヌ(武久源造編曲)

◇プロフィール

武久源造 Genzoh Takehisa
(オルガン、チェンバロ、ピアノ、指揮、作曲)

 1957年生まれ。1984年東京芸術大学大学院音楽研究科修了。研究テーマは、主にバッハ以前の音楽におけるDispositioについて。チェンバロ、ピアノ、オルガンを中心に各種鍵盤楽器を駆使して中世から現代まで幅広いジャンルにわたり様々なレパートリーを持つ。特にブクステフーデ、バッハなどのドイツ鍵盤作品では、その独特で的確な解釈に国内外から熱心な支持が寄せられている。また、作曲、編曲作品を発表し好評を得ている。音楽的解釈とともに、楽器製作の過程についても造詣が深く、楽器の構造的特色を最大限に引き出す演奏が、楽器製作家たちからも高く評価されている。91年「国際チェンバロ製作家コンテスト」(アメリカ・アトランタ)、また97年および01年、第7回および第11回「古楽コンクール」(山梨)、ほか多数のコンクールに審査員として招かれる。ソロでの活動とともに、00年に器楽・声楽アンサンブル「コンヴェルスム・ムジクム」を結成し、指揮・編曲活動にも力を注ぎ、常に新しく、また充実した音楽を追求し続けている。02年から毎年、韓国からの招請による「コンヴェルスム・ムジクム韓国公演」を行い、両国の音楽文化の交流に大きな役割を果たした。2013年、ラモーの抒情喜劇『レ・パラダン』の日本人による初演を指揮して、絶賛を博する。また、近年、毎年、ヨーロッパ各国(ドイツ、リトアニア、アイスランド、スウェーデン等)で、即興演奏を含む多彩なプログラムによって、オルガン、チェンバロ、ピアノその他の楽器を使った・コンサートを行い、注目を集めている。2018年、7月、ドイツ・シュタインフェルトでのバジリカ・オルガンを使ったコンサートでは、山口眞理子との共演で、自作の「アクア・ベリターティス」を発表。好評を得る。
 91年よりプロデュースも含め40作品以上のCDをALMRECORDSよりリリース。中でも「鍵盤音楽の領域」(Vol.1~9)、チェンバロによる「ゴールトベルク変奏曲」、「J.S.バッハオルガン作品集Vol.1」、オルガン作品集「最愛のイエスよ」、ほか多数の作品が、「レコード芸術」誌の特選盤となる快挙を成し遂げている。2015年、ジルバーマン・ピアノによるJ. S. バッハ「パルティータ」の世界初の全曲録音をリリース。2016年3月には、2度目のゴールトベルク変奏曲の録音をリリース。ここでは、日本で初めて16ft弦付チェンバロによって、ゴールトベルクの新しい可能性を切り開いている。さらに、同年、市瀬玲子との共演によって、バッハのガンバ・ソナタ全曲を、ジルバーマン・ピアノとチェンバロを使い分けて録音し、発表。2017年4月、やはり、ジルバーマン・ピアノとペダル付チェンバロを使い分けて、バッハの《平均律》全曲録音を始動。4部作の第一〜三弾を発表。その際、従来誤訳として議論されてきた《平均律》を《適正律》と改めた。これらの新作CDは共に、レコード芸術誌の特選盤となる。
 02年、著書「新しい人は新しい音楽をする」(アルク出版企画)を出版。各方面から注目を集め、好評を得ている。05年より鍵盤楽器の新領域とも言えるシンフォニーのピアノ連弾版に取り組み多方面から注目を集めている。学生時代から数多く放送に出演し、演奏やレクチャー、解説などを担当した。特に、06年NHK第一ラジオ「ときめきカルチャー」コーナーに年間を通して出演。その後もNHKのカルチャー・ラジオのシリーズで何度かレクチャラーを務める。1998~2010年3月フェリス女学院大学音楽学部及び同大学院講師。現在、国立音楽大学客員講師。
オフィシャルサイト http://www.genzoh.jp/index.html


山口眞理子 Mariko Yamaguchi
(オルガン、チェンバロ、バロック・ヴァイオリン)

2歳よりヴァイオリンを、東洋英和女学院在学中よりオルガンを始める。
フェリス女学院大学および同大学院音楽研究科オルガン専攻修了。
ヴァイオリンを故・鷲見康郎氏に、オルガンを武田ゆり、高橋靖子、宮本とも子、宇内千晴、三浦はつみの各氏に、オルガン・チェンバロ・バロックヴァイオリン・アンサンブルを武久源造、桐山建志両氏に、ライアーをKim Hong Chang氏に師事。
第35回オルガニスト協会新人演奏会出演。
バッハ:「マタイ受難曲」、ラモー:オペラ「レ・パラダン」、メンデルスゾーン:「パウロ」などに、バロックヴァイオリン、オルガン、ペダルチェンバロで参加。
日本福音ルーテル大森教会オルガニストを経て、現在東洋英和女学院小学部オルガニスト・講師の他、ドイツの歴史的オルガンでのコンサート等、国内外にて活動
CD:「バルダキン・オルガンの世界」ALCD1121(レコード芸術2011年4月号他特選盤)
バッハ:協奏曲集第4集「未来系バッハへの道」ALCD1127(レコード芸術2012年2月号他特選盤)
「Aqua Veritatis-真理の水-ヨーロッパの春 聖母マリアを讃えて」(東京カテドラル)


◇武久源造演奏のCD ※2015年以降に発売されたCDについて紹介


J.S.バッハ/パルティータ(全曲)
武久源造 フォルテピアノ(ジルバーマン・モデル)
レコード芸術2015年5月号 特選盤
◇(前略)ジルバーマンのフォルテピアノについて武久は「チェンバロ、クラヴィコード、ピアノフォルテ(フォルテピアノ)、3つの楽器の特質を備えている」と言うが、何はともあれ、この楽器の音色はたいへん円やかで、同時にデリケートな味わいに富む。そして、素晴らしいの一言に尽きるのが、全6曲にわたる武久の名演奏。(中略)武久は《パルティータ》各曲それぞれの特色、表現するところを鮮やかに捉え切り、奥行きの深い達演を披露しつづける。まさしく珠玉の名盤の誕生だ。(濱田滋郎氏・レコード芸術2015年5月号より)

◇(前略)ジルバーマンはシュタインなどのウィーン式アクションの楽器に比べて音色は丸く温かみがあり、オルガンでも弦楽器風の音色を好んだバッハにふさわしく、ウナ/ドゥエ・コルダ、チェンバロ・レジスターのストップを搭載している。演奏がまたすばらしい。こうした多様な音色を含めて楽器を自在に操り、しなやかに大胆に音楽を奏でているのだ。(中略)チェンバロともモダンのピアノとも、そしてこれまでのどのジルバーマンとも違う、新しいバッハ体験が得られるであろう。(那須田務氏・レコード芸術2015年5月号より)



J. S. バッハ ゴルトベルク変奏曲/14のカノン
〜いわきアリオス所蔵16フィート弦付チェンバロによる〜
武久源造(チェンバロ&ポジティーフ・オルガン)、山川節子(チェンバロ)
レコード芸術2016年3月号 特選盤
◇武久源造は以前にも《ゴルトベルク変奏曲》の秀演CDを発表していたが、このたび新たにこれを録音したのは、1台の特殊な魅力をおびたチェンバロとの出会いが機縁になってであるらしい。それは2008年にマティアス・クラマーが製作した、1754年ツェル/ハス・モデル(ドイツ)の楽器で、「16フィート弦」を用いていることが特色となっている。(中略)武久は、彼自身の言葉によれば「感情表現の上に格別な利点を持つ」この楽器を駆使して、事実、まことに感興豊かな奏楽を実現している。独特な立体感、表現に富む彼の演奏は、いつもながら伝えるところの大きいライナー・ノーツを併せ読みながら聴くにつけ、真に価値高いものと思わざるを得ない。なお、余白には1975年に発見された「《ゴルトベルク変奏曲》の<アリア>による14のカノン」が、第2のチェンバロ(山川節子)と共に収められ、武久はそこではポジティブ・オルガンも奏している。(濱田滋郎氏・レコード芸術2016年3月号より)


バッハの錬金術 Vol.1
ヴィオラ・ダ・ガンバと鍵盤楽器のためのソナタ全曲/二つのトッカータ
武久源造(チェンバロ&フォルテピアノ)、市瀬礼子(ヴィオラ・ダ・ガンバ
レコード芸術2016年10月号 特選盤
◇チェンバロやオルガンの演奏で、極めて思慮深い内容のこもった演奏で斯界から高い評価を受ける武久源造が、ピリオド楽器演奏の本場の一つであるロンドンで、多くの優れた奏者がひしめく中、王立音楽院のヴィオラ・ダ・ガンバ教授に就き、これまた高い存在感をもって活躍する市瀬礼子と、バッハの3つの《ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ》を録音した。(中略)第1番を聴いて思うのは、武久のチェンバロは、聴いているとなぜか心が澄み落ち着いてくるのを感じるということだ。音を奏でているというよりも、音で心に語りかけてくるという印象がある。ここでもその印象は全く変わらない。美しく繊細な音色とこまやかな表情が何とも素晴らしい。市瀬も武久に応えるかのように、これ見よがしなところのない、しかし過不足のない実に見事な演奏だ。これに対しフォルテピアノを使った第2番、第3番の演奏がまた素晴らしい。この楽器の音色や響きがガンバにこれほどマッチするとは。両者の心からの対話に満ちた演奏がバッハの音楽にこの上ない麗しき至福の時間をもたらしており、真に豊かな楽興と精神的充足感を感じさせる名演が成し遂げられている。(中村孝義・レコード芸術2016年10月号より)


バッハの錬金術Vol.2 #1/4
J.S.バッハ/適正律(平均律)クラヴィーア曲集第1巻より第1〜第6番をチェンバロで演奏。/同第2巻より第1〜第6番をフォルテピアノで演奏。/最後に再び同第1巻〜前奏曲とフーガ第1番が収録されていますが、これはフォルテピアノで演奏されており、チェンバロで演奏された冒頭の同曲と聴き比べるという趣向。
武久源造 ペダル・チェンバロ、フォルテピアノ(ジルバーマン・モデル) 
レコード芸術2017年5月号 特選盤
◇さすがは、こんにちの最も個性的・独創的−けっして「風変わり」という意味合いではないーな古楽鍵盤奏者、武久源造。彼がこのたび着手したJ.S.バッハ「Das Wohltemperierte Clavier」シリーズの第1枚目は、恒例の《平均律》ではなく《適正律クラヴィーア曲集》と記されている。たしかにバッハの命名は、こんにち常識的な意味での「平均律」を表わしてはいない。それは「程良く調律された」ほどの意味であり、従って武久の「適正律」にしようという提唱は全く正しい。この提唱にふさわしく、CDの作り方もまた、まったく非凡な発想によるものである。(中略)第1巻からの6曲はチェンバロ(中略)、で、第2巻からの6曲は初期フォルテピアノ(中略)と、2種の楽器により弾き分けられるのだ。さらには曲の演奏順序にまでひと工夫が設けられ、第1巻は第1番から第6番まで普通に進むが、第2巻のほうは第6番から第1番へと、逆に進められるのだ。以上の説明で紙幅は一杯となったが、演奏も、解題も実に素晴らしい。(濱田滋郎氏・レコード芸術2017年5月号より)

◇(前略)当盤ではまず「適正律」と訳し、曲によって調律を変えている。そのため曲による響きの歪は少ない。(中略)通常は感情を入れずに抽象的な音楽として扱われるフーガを、武久は修辞学的音楽的な見地から人間的で劇的な音楽と理解し、生き生きとした情感を盛り込むと同時にバロックの不均等リズムを多用してスウィングするように奏でているのだ。チェンバロによる第1巻は任意的な装飾音をふんだんに入れ、足鍵盤の重低音を加えて豊穣かつ饒舌。フォルテピアノによる第2巻は柔らかな音色で歌謡的な側面が強調される。たとえば第4番ハ短調の前奏曲は実に味わい深く、そのフーガは狂おしいほどの情念。(後略)(那須田務氏・レコード芸術2017年5月号より)



バッハの錬金術Vol.2 #2/4
J.S.バッハ/適正律(平均律)クラヴィーア曲集第1巻より第7〜第12番をチェンバロで演奏。/同第2巻より第7〜第12番をフォルテピアノで演奏。/最後に再び同第1巻の前奏曲とフーガ第8番の前奏曲が収録されていますが、これはフォルテピアノで演奏されており、チェンバロで演奏された冒頭から3曲目の同曲と聴き比べるという趣向。
武久源造 ペダル・チェンバロ、フォルテピアノ(ジルバーマン・モデル)
レコード芸術2018年2月号 特選盤
◇先に発表された、武久源造がその優れた演奏技術および音楽性とともに、ユニークな個性をも発揮したアルバム『バッハの錬金術』の第2集。(中略)当集では、第1巻から第7番〜第12番をチェンバロで、第2巻第12番〜第7番(このように順が逆になる)をフォルテピアノで、と弾き分ける。妙味については述べるスペースを失ったが、ぜひ熟読ならぬ塾聴されたいCD。(濱田滋郎氏・レコード芸術2018年2月号より)

◇(前略)高い集中度で弾かれ、内面的な深みを湛えた秀演だ。(那須田務氏・レコード芸術2018年2月号より)



バッハの錬金術Vol.2 #3/4
J.S.バッハ/適正律(平均律)クラヴィーア曲集第1巻より第13〜第18番をチェンバロで演奏。/同第2巻より第13〜第18番をフォルテピアノで演奏。
武久源造 ペダル・チェンバロ、フォルテピアノ(ジルバーマン・モデル)
レコード芸術2019年1月号 特選盤
◇武久源造は、日本有数のピリオド鍵盤楽器(チェンバロ、フォルテピアノほか)奏者であるとともに、その学識と判断力も、視力を持たぬというハンディを少しも感じさせぬまでに、広く深い。当アルバムは、その彼が進めてきたバッハ〈平均律クラヴィーア曲集〉ー納得するほかはないほど“適正な”彼の主張により、ここでは「適正律クラヴィーア曲集」と呼ばれているーの第3枚目。(中略)これまでの2点とは行き方を変え、第1巻第13番のあとに第2巻第13番、以下同様に、同番号の〈前奏曲とフーガ〉をひとまとめに続けて弾いてゆく。こうすることにより、同じ調性ー嬰ヘ長調なら嬰ヘ長調、ト短調ならト短調ーの楽曲がまとめて聴かれることになるが、それにより、聴きてはバッハがそれぞれの調に感じたところ、託したところを、よりはっきりと受け取りやすくなる。またいっぽうでは、第1巻と第2巻との相違点も、また把握しやすくなる。(中略)演奏ぶりはしばしばユニークだが、必ずそれなりの説得力を伴っており、深くうなづきながら聴き入ることが出来る。(濱田滋郎氏・レコード芸術2019年1月号より)

◇武久源造による「適正律クラヴィーア曲集」の第3集。(中略)今回は第13番から第18番までだが、並べ方を変えて第1巻の第13番に続いて第2巻の第13番、第1巻の第14番、第2巻の第14番と言うように同じ調性の曲を組み合わせている。演奏はまさに円熟の境地を感じさせるもの。第13番嬰ヘ長調の前奏曲。フレージングは自在かつ味わい深く、ペダルのずしんと響く低音が快い。フーガは声部による多彩な音色が華やか。続く第2巻の第13番はフォルテピアノ。音色も序曲風の付点リズムも柔らかい。続く第1巻第14番嬰ヘ短調はチェンバロで奏でられて荘厳かつ重厚。第2巻の方はイタリアの協奏曲を想起させるいくぶんモダンな曲だが、フォルテピアノの繊細な強弱などの表情付けが美しい。こうしてみると新しい時代の音楽である、ギャラント風ないし、ドイツ風の多感様式的な音楽のようにも聴こえて興味深い。チェンバロからフォルテピアノへと時代の趣向が変わったのも頷ける。総じて一つ一つの曲が丁寧に奏でられ、構造は明快だし、慎重に熟考された性格づけが強い説得力をもたらしている。(那須田務氏・レコード芸術2019年1月号より)


◇武久源造が山口眞理子と共演したCD

鍵盤音楽の領域 vol.9 バルダキン・オルガンの世界
武久源造(オルガン)山口眞理子(オルガン、バロック・ヴァイオリン)立岩潤三(パーカッション)
レコード芸術2011年4月号 特選盤
パイプオルガン製作者 中西光彦プロフィール     
 元奈良市立一条高校・私立東大寺学園高校国語科教諭。在職中より中世ルネッサンス音楽の演奏団体アウルコンソートの一員として活動。その関連でオルガンに関心を持って独学で知見を養う一方、退職と同時に山梨県小渕沢に1年余滞在し、草苅オルガン工房にて草苅徹夫氏の指導を受け、オルガン製作を研修した。奈良県山辺郡山添村の工房で、歴史的な小型オルガンのコピー等、主としてポジティフオルガンの製作に取り組んでいる。パイプ・鍵盤・ケース・装飾等全ての部品を自作するのが身上。日本オルガン研究会会員 ※なお、中西光彦は佐保山茶論主宰者の岡本昭彦の叔父です。

◇武久源造さんによる「鍵盤音楽の領域」の第9巻は、『バルダキン・オルガンの世界』と題して中世からルネサンスのオルガン作品35曲を収録している。(中略)作品を要領よく網羅し、加えて武久さん作の《真理の水》という清かな曲までおさめている。ルネサンス期のバルダキン(天蓋つき)オルガンの復元楽器(中西光彦さん製作)2台を弾きわけた、ひたむきで心あたたまる演奏が聴かれる。曲によって「ふいご係」の山口眞理子さんが第2オルガンやヴァイオリンを受け持ち、さらにパーカッションの立岩潤三さんが加わって、多彩な響きを添えてゆく。オルガンの音色といい、のりのよいリズムといい、充実した楽興の時を刻みこんでいる。武久さんのお言葉どおりに「オルガンによって、雄弁に語り、美しく歌い、はじけるように踊る」CDなのである。中西さんによる製作オルガンにかんするコメントも興味ふかく読める。(皆川達夫・レコード芸術2011年4月号より)

◇天蓋(バルダキン)つきのパイプ・ケースをテーブルの上に立て、片方に鍵盤を、反対側にパイプに風を送るふいごをつけたルネサンス期のオルガンをモデルに、中西光彦が製作した二つのオルガンを使っての録音。みずからアマチュアのオルガン製作者としながらも中西はスイスに残る2つのモデル楽器を精査、先行研究や関連資料を踏まえてルネサンスのオルガンの機能を蘇生させようとした。その一貫した製作理念と努力、この試みを支持した日本のオルガン製作の先達たちによる協力が、楽器とともにこのディスクを生み出した。教会堂に据え付けられた16世紀のオルガンは他にもあるが、バルダキン・オルガンの復元・録音となると、寡聞にして他の例を知らない。この貴重な試みを、音で体験できる喜びは大きい。なにより楽器の輝かしく張りのある響きと音色が魅力。むろん曲目も楽器とそのコンテクスト、時代を勘案して慎重に選ばれている。舞曲やレセルカーダなど、選曲者でもある武久源造の演奏は、それぞれの楽曲の性格や書法を、これらの楽器の機能や魅力と結びつけた的確なものだ。曲により打楽器、ヴァイオリンを加えての演奏である。そのうえ一定の風圧を維持するばかりでなく、演奏にもデリケートな影響をもつふいご操作は、製作者や録音に参加した音楽家がつとめる。多くの人々の熱意がひとつに結実したこの希有なディスクが、世界のオルガン愛好家への福音でなくて何であろうか。(美山良夫・レコード芸術2011年4月号より)



未来系バッハへの道【J. S. バッハ:協奏曲集 IV】
New Perspective on BACH

ハルモニア・インヴェントゥール
 武久源造[フォルテピアノ(ジルバーマン・モデル)/指揮] 
 飯塚直子・高橋明日香[リコーダー]
 砂山佳美[フラウト・トラヴェルソ] 
 桐山建志[バロック・ヴァイオリン]
 山口眞理子[ペダル・チェンバロ] 
 山内彩香・山口眞理子[バロック・ヴァイオリン] 
 田中千尋[バロック・ヴィオラ]
 高橋弘治[バロック・チェロ]諸岡典経[ヴィオローネ]
 

レコード芸術2012年2月号 特選盤
◇フォルテピアノによるバッハの協奏曲である。(中略)協奏曲の登場を心待ちにしていたファンも決して少なくないだろう。(中略)自身が執筆した解説の中で、「バッハのチェンバロ協奏曲をジルバーマン型のピアノフォルトで弾いてみること、それによって、これらの曲の新しい魅力がどのように開拓できるか・・」と書いている武久の意図は見事に成功しているといってよいだろう。まろやかに澄んだ粒立ち美しいフォルテピアノの音をこまやかな表現で生かすとともに、レジスターや奏法によって繊細で多彩な音色を添えた演奏には、チェンバロによるそれとはひと味もふた味も違った深く柔らかな情趣がある。チェンバロ協奏曲第6番のリコーダーや《三重協奏曲》のトラヴェルソといった木管との等質な音色感も含めて、バッハの協奏曲から様々な発見と喜びを味わうことができるし、2台のチェンバロ協奏曲でフォルテピアノとチェンバロに加えてペダル・チェンバロを使用しているのも興味深かった。(歌埼和彦 レコード芸術2012年2月号より)

◇(前略)メインとも言うべき3曲の協奏曲を通じて何より印象的なのは、文字通り、この時代の「コンチェルト」のかたちとスタイルをしっかりと踏まえながら、個々の演奏家たちとの間に緊密なアンサンブルを生み出そうとしている点だ。ジルバーマンによる楽器(ライナーでは歴史的背景を踏まえ「ピアノフォルト」と呼ばれている)を用いることで見えてくるものは、全てこの「土台」があればこそである。ヘ長調の協奏曲の伸びやかさのなかでの自在な表現は、バッハがこのタイプの楽器と対峙した跡をどこか感じさせるものだ。あるいはト短調協奏曲における色合いの幅もまた、オーケストラの雄弁な歌共々、このフォルテピアノに作曲家を介して向き合った過程で武久が得た一つの答だろう。自ら筆を執った内容の濃いライナー・ノーツを含め、選曲からしっかりと作り込まれた一枚だ。(後略)。(岡部真一郎 レコード芸術2012年2月号より)


ヴィオラ・ダ・ガンバの魅力 (2018.11.18 終了)
後援 奈良市・日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会


ヴィオラ・ダ・ガンバ 福沢 宏 
 
チェンバロ  山縣万里

                 使用した楽器
        Treble Gamba:François Bodart 2000 Belgium
        Alto Gamba:Arnold Dolmetsch c.1920 England
        Tenor Gamba:François Bodart 2003 Belgium
        Bass Gamba:Anonymous c.1750 Germany         
        Bass Gamba:Eugen Sprenger 1936 Germany
        Bass Gamba:Wang Zhi Ming 2009 China
        
        Cembalo:Eizo Hori堀栄蔵 1997 Japan

 繊細な音楽性、抜きんでた技術と知性で日本を代表するヴィオラ・ダ・ガンバ奏者福沢宏が厚く信頼を寄せ共演を重ねている実力派チェンバロ奏者山縣万里と共演。
ヴィオラ・ダ・ガンバと言えば、一見チェロに似た低音楽器と思われるでしょう。しかしこの楽器にはトレブル(高音)、アルト、テナー、バスといった異なるサイズがある事はあまり知られていません。
 第1部ではこれらの楽器による様々な音色を、そして第2部ではドイツとフランスを代表する二人の作曲家、バッハとマレの音楽をお楽しみいただきました。









お客様のご感想(アンケートより)

●自然に囲まれた茶論で身近に演奏が聴けて贅沢な時間をもてて良かった。ヴィオラ・ダ・ガンバを初めて聴きましたがどの曲も優しく語りかけるよう。一番心をゆさぶられたのはトレブルによるイタリアングラウンドによる変奏曲。これからもずうっと聴いていたい音楽です。

●トレブルの音色が美しかった。7弦のヴィオラ・ダ・ガンバは強烈な印象でした。ヴィオラ・ダ・ガンバの種々の楽器を聴けて大変良かった。会場の大きさに適合したコンサートでした。楽しかったです。チェンバロ、シャープでした。

●ガンバの音色の違いも楽しめて良かった。古いガンバの熟成した枯れた音は魅力的です。

●福沢宏、山縣万里両先生の世界に只々引き寄せられました。ヴィオラ・ダ・ガンバの音色、チェンバロの音世界に一音、一音大切に大切に演奏されるお二人の世界を素晴らしい佐保山茶論でご紹介頂けました事嬉しく至宝の一時でした。ありがとうございました。合掌。

●身近で聴けて低音の音の迫力が良かった。トレブルガンバのやさしい音を聴いていて心安らぎました。初めての曲ばかりでしたがつかの間の安らぎを与えて下さいました。ありがとうございます。

●ガンバやチェンバロの説明がありよく分かって良かったです。古のものと言っておられた7弦のガンバも聴けて良かったです。チェンバロソロもあり、思っていたより柔らかい音でチェンバロにもいろいろ種類があるのを知りました。

●いい季節の日曜日の午後、ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏会で3時間(1部&2部)もいい演奏を聴きながら過ごすことが出来てとても良かったです。ガンバの種類が実際に見られて良かった。意外と音量を大きく感じた。季節、建物のたたずまい、お庭が素晴らしかった。心が安まりました。

●トレブルガンバの音が特に気に入りました。ヴァイオリンよりもふくよかでヴァイオリンがテクニックバリバリの若手歌手だとするとテナーガンバは若い頃ほどにはテクニックを発揮出来ないけれどそれを補って余りある人生経験の豊かさを持つ妙齢のベテラン歌手のようです。山縣さんのチェンバロも素晴らしいです。目をつむって聴いていると織物の職人がタテ糸とヨコ糸を自在に操って見事な絵巻物を織り上げていくその姿がまざまざと見えるような見事な演奏です。なぜこのような素晴らしい楽器がピアノにその座を明渡さねばならなかったのか不思議です。アンコールの優雅なロンド(アラン・マレ)は涙が出ました。

●(曲の演奏時間が)長すぎず短すぎず素晴らしかった。室内音楽をこんなに間近でうっとり聴いたのは初めてであり、一つ一つの音が心にしみた。

●とても音響が良かった。

●チェンバロの響きの美しさにビックリ。

●音響、雰囲気が良かった。会場の雰囲気が曲に合っていてとてもすてきでした。

●会場と音楽がマッチしているのが良かった。1階のステージ直前の席と2階席の音の違いを楽しめた。

●2階席でとても良かったです。古楽をやるのにぴったりの場所だと思います。

●熱演すばらしかったです。ありがとうございました。

●音楽と演奏と会場が良かった。響きが良くすてきな会場で演奏がひきたちました。とてもよかったです。

●演奏者、選曲が良かった。充実した企画と内容で楽しい時間を過ごさせて頂きました。

●心が洗われる演奏、本当にすばらしい演奏でした。サロンもすばらしいです。

●楽器の故か、静かな音楽会でした。2階席の音が段違いに良かった。

●とても会場が良かったです。(ガンバとチェンバロの両方共)すごくきれいな良い音がしていました。チェンバロがカッコイイ。1750年のガンバがすごい良い音でなっていた。

●以前からヴィオールの実際の音を聴きたかった。

●どの曲も素晴らしかったです。酔いしれました。インベンションはほんとうに美しい曲だとあらためて思いました。1700年代の音色も聴かせていただきありがとうございました。


◇プログラム

第1部 <ヴィオラ・ダ・ガンバさまざま>

◆ D.オルティス Diego Ortiz(c.1510-c.1570)
   レセルカーダ第8番 第5番 第2番 (B)

◆ R.カー Robert Carr(17c.) 
   イタリアングラウンドによる変奏曲 (Tr)

◆ 作者不詳 Anonimous(17c.)
   グラウンドによる変奏曲      (Tr)

◆ 作者不詳 Anonimous
   グリーンスリーヴスによる変奏曲  (At)

◆ J.H.ダングルベール Jean-Henri d’anglebert(1635-1691)
   パッサカーユ ト短調(チェンバロソロ)

◆ N.シェドヴィーユ Nicolas Chédeville(1705-1782)
   ソナタ ト短調 Vivace / Alla Breve / Largo / Allegro ma non presto  (Tn)

◆ K.F.アーベル Karl Friedrich Abel(1723-1787)
   無伴奏ソナタ ト長調 Adagio / Allegro / Minuet  (B)

◆ G.Ph.テレマン Georg Philipp Telemann(1681-1767)
   ソナタ イ短調 Largo / Allegro / Soave / Allegro  (B)


[使用楽器]
トレブル(Tr):François Bodart 2000 Belgium
アルト(At):Arnold Dolmetsch c.1920 England
テノール(Tn):François Bodart 2003 Belgium
バス(B):Eugen Sprenger 1936 Germany

チェンバロ:Eizo Hori 堀栄蔵 1997 Japan


第2部 <後期バロックの巨匠、バッハとマレ>

◆ J.S.バッハ Johann Sebastian Bach(1685-1750)
   − テノールガンバとチェンバロのためのソナタ ヘ長調
     (原曲:オルガンソナタ 変ホ長調 BWV 525)(Vivace) / Adagio / Allegro

   − 無伴奏組曲 ト長調(チェロ組曲 ト長調 BWV1007)より
      Allemande / Courante

   − ガンバとチェンバロのためのソナタ第1番 ト長調 BWV 1027
     Adagio / Allegro ma non tanto / Andante / Allegro moderato

◆ G.フレスコバルディ Girolamo Frescobaldi(1583-1643)
   フォリアによるパルティータ (チェンバロソロ)

◆ M.マレ Marin Marais(1656-1728)
   − 組曲 ト長調「ヴィオル曲集第3巻」より
     Prélude / Allemande-Double / Courante / Sarabande / Gigue

   − スペインのフォリア Folies d’Espagne

[使用楽器]

テノールガンバ:François Bodart 2003 Belgium
7弦バスガンバ:Anonymous c.1750 Germany
7弦バスガンバ:Wang Zhi Ming 2009 China

チェンバロ:Eizo Hori 堀栄蔵 1997 Japan


◇プロフィール


福沢 宏 Hiroshi Fukuzawa (ヴィオラ・ダ・ガンバ / Viola da gamba)
オランダのデン・ハーグ王立音楽院をソリスト・ディプロマを得て卒業。ヴィオラ・ダ・ガンバをヴィーラント・クイケン、室内楽をシギスヴァルト・クイケン、バルトルド・クイケンの各氏に師事。在学中より数々の室内楽のメンバーとしてオランダ、ドイツを中心にヨーロッパ各地で演奏活動を行った。帰国後はソロ・リサイタル他、古楽関係の音楽祭やサイトウ・キネン・フェスティバル、NHK・FMリサイタル、名曲リサイタルなどに出演。またバッハ・コレギウム・ジャパンによる演奏会、レコーディングに数多く参加するなど、全国各地で多彩な活動を行っている。フォンテックよりCD「マラン・マレ/ヴィオル曲集第3巻」(2015年レコード芸術誌特選盤)をリリース。東京藝術大学、東海大学非常勤講師。
http://hiroshifukuzawa.web.fc2.com/concert.html



山縣 万里 Mari Yamagata(チェンバロ/ Cembalo)
東京藝術大学音楽学部楽理科を卒業後、同器楽科チェンバロ専攻へ進学、在学中に安宅賞、卒業時にアカンサス音楽賞を受賞。同大学院修士課程チェンバロ専攻を修了後、ソリスト・通奏低音奏者として活動を続ける。ソロの演奏会シリーズ《ひとり琴》を毎年開催。様々なオーケストラやアンサンブルの公演にチェンバロおよびオルガン奏者として参加するかたわら、主宰するアンサンブル《Duo Maris》《通奏低音組合 Continuo Guild》、クラシックからジャズやタンゴまで多彩なレパートリーを誇る《アンサンブル・エスプレッソ》、和楽器奏者とのコラボレーション企画など、幅広い演奏活動を積極的に行っている。https://magatamary.jimdo.com



◇福沢 宏ソロCD
「マラン・マレ/ヴィオル曲集第3巻」
  福沢 宏(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
    武澤秀平(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
    野入志津子(リュート)
    山縣万里(チェンバロ)
レコード芸術2015年5月号特選盤
◇ソロ活動とともに、信頼できるコンティヌオ奏者として国内外のアンサンブルに招かれて活動してきた福沢宏による、意欲的なマレ演奏が登場した。(中略)演奏は、沈思、内密さよりも、マレの残した楽譜をもとに、「優しく」、「強く」といった指示があればその対比を明確にし、また反復を省略して音楽の変化を浮き彫りにし、リュートを加えた低音によりリズムを際立たせ、自在であるとともに明快な音楽的造形を追求している。(中略)たとえばト長調組曲のアルマンド<ラ・マニフィク>とその変奏や、二長調組曲に含まれた内省的ではあるが、情緒に流れない<嘆き>は、こうしたアプローチがもたらした白眉の演奏だ。ソロが主張しながらアンサンブルとしても見事なマレを聴くことができる。(美山良夫 レコード芸術2015年5月号より)

オランダのリュート音楽 Lute Music in Holland (2018.6.9終了)
後援:奈良市・オランダ王国大使館


演奏とお話: 佐藤豊彦

使用楽器:オランダ式10コースリュート

リュート界の巨匠佐藤豊彦(元オランダ王立ハーグ音楽院教授)が、主にユトレヒトで曲集を出版したヨアヒム・ヴァン・デン・ホーヴェ(1567-1620)とアムステルダムで曲集を出版したニコラス・ヴァレ(1583-1644?)の二人のリュート奏者の作品を演奏しました。




お客様のご感想(アンケートより)

●涙が出そうなほど心にしみました。

●佐保山茶論の雰囲気にピッタリ。

●知らない曲ばかりで楽しかったです。お話もおもしろかったので次回は曲の解説ももっと聞かせていただけたらうれしいです。

●1曲目の「プリンス(オラニエ公)のアルマンド」がオランダの国歌と知って今後オリンピックなどで聴くのを楽しみにしております。興味深いオランダ語たくさんありがとうございました。ほぼ同じ年齢ですので今後のご活躍をお祈りします。

●2階席で聴かせていただいてリュートの音の広がりを初めて体験しました。

●素敵な雰囲気の中ありがとうございました。

●オランダのリュート曲の生の演奏を聴ける機会はなかなかないので本当に貴重な演奏会でした。佐藤先生の演奏も大変素晴らしかったです。

●オランダ語がこんなにも日常日本語で使われていることにびっくりしました。1曲1曲が心なごむ曲で素敵な時間を過ごさせて頂きました。ありがとうございました。次回楽しみにしております。

●久々の佐保山茶論でのコンサート大変感激でした。オランダのリュート音楽の楽しさを教えてもらいました。また次の機会を楽しみにしています。

●とても雰囲気が良かった。

●光が優しいサロンで優しい音色と佐藤さんの優しい口調のお話・・・。奈良でのステキな時間を過ごせました。

●とても雰囲気が良かった。東京から来た甲斐がありました。佐藤先生の演奏もお話も良かったです。とても間近にこんなステキな演奏が聴けるこの空間もとても良かったです。

●リュートのなつかしい響きが心地良かったです。演奏もますますあぶらが乗った感じで素晴らしい。オランダの話し、日本語になったオランダ語のお話も興味深かったです。

●普段CDで聴いている以外の曲をたくさん生で聴けて最高でした。

●話と曲共に場所に良く合っていた。

●曲を聴くだけでなくオランダの歴史や文化など勉強になった。

●オランダ式リュートを使った演奏と当時のオランダの話しが興味深かった。

●音楽、お話そして全体的な雰囲気が良かった。

●16、17世紀の音楽事情の一端が伺えて良かった。



☐オランダのリュート音楽   佐藤豊彦 著

 オランダ語ではネーデルランド(低い国)と呼ばれるオランダ王国は、山が無いだけでなく、国土の4分の1が水面下という文字通り低い国(ネーデル=低い、ランド=国)です。実はオランダはそのネーデルランド王国の州の1つホランドのことですが、独立の際重要な役割を果たした州であるため一般的には国名として呼ばれるようになりました。独立戦争は西暦1568年に始まりましたが、独立が認められたのは1648年です。ドイツからホランド州統治の為に派遣されていたオラニエ(オレンジ)公ウィレム一世(在位1572-1584)がオランダ独立国家の事実上の初代君主です。
 国土が九州よりも小さなオランダが、西暦1600年前後には世界で初めての株式会社と言える「東インド会社」を設立して遠くアジア諸国へ進出します。僅か300トンのオランダ商船「リーフデ号」が1600年に九州の豊後(今の大分県)に漂着して以降、江戸時代の日本鎖国の間長崎の「出島」を通してヨーロッパの唯一の国として日本と交易したことは皆さまご存知の通りです。
 16世紀後半からの急速な経済成長に伴って、17世紀にはヨーロッパでもっとも豊かな国になります。そして、アムステルダム、ユトレヒトなどで印刷業が盛んになり、リュート音楽の出版も頻繁に行われました。今回はその中でも主にユトレヒトで曲集を出版したヨアヒム・ヴァン・デン・ホーヴェ(1567-1620)とアムステルダムで曲集を出版したニコラス・ヴァレ(1583-1644?)の二人のリュート奏者の作品を選びました。17世紀初頭のオランダでは10コースで糸蔵を2つ持つダッチヘッドのオランダ式リュートが一般的に使われました。
 そのオランダに私は35年くらい住み、ハーグ王立音楽院で30年以上に渡って教鞭を取りました。今では多くの卒業生が世界中で活躍しています。人生の半分をオランダで、その前のスイス留学時代を含めると半分以上をヨーロッパで過ごしたことになります。私にとっては切っても切れない関係にある国がオランダです。
 佐保山茶論では何度も演奏会のお世話になりましたが、ソロ演奏は常にバロックリュート、つまり17世紀後半以降18世紀に掛けての音楽でした。今回は私にとって第二の故郷とも言えるオランダの音楽を是非とも皆さんに紹介したく、このようなプログラムを考えてみました。

曲目
1.プリンス(オラニエ公)のアルマンド    −アドリアンセン
  Allemande Prince - Emanuel Adriaensen(Antwerpen 1584)
2.ダウランドのパヴァーナとガリヤード    −ヴァン・デン・ホーヴェ
  John Dowland’s Pavana & Galliard (Utrecht 1612)
3.マルティノ氏との最後の別れ        −ヴァン・デン・ホーヴェ
  Het laatste Leytsche afscheit tussen Do,Martino (Leiden 1614)
4.フレミッシュ地方の流行り歌        −ヴァン・デン・ホーヴェ
  Chanson Flameng (Utrecht 1612)
5.乞食のファンタジーと村の鐘        −ヴァレ
  La Mendiante Fantasye (Amsterdam 1615) / Carillon de
  Village (A’dam 1616)
6.菩提樹の木陰で              −ヴァレ
  Onder de Lindegröne (A’dam 1615)
7.デカパン・ピエロ             −ヴァレ
   Les pantalons (1615)
8.イタリアのパッサメッツォとそのガリアード −ヴァレ
   Passamezzo d’Italia & Gaillard de la Passamezzo(1616)

☐佐藤豊彦 Toyohiko Satoh プロフィール


1971年に世界で初めてのバロックリュートLPをスイスで録音してデビュー。1973年には29歳でオランダ王立ハーグ音楽院教授に抜擢され、2005年に退官するまでの32年間に世界で活躍する多くの後輩を育てた。1982年のカーネギーホールでのリサイタルは、ニューヨークタイムズで写真入りで絶賛を博した。30枚近いソロLP、CDそして数多くのアンサンブルでの録音の中にはオランダでエジソン賞、日本で文化庁芸術祭賞と2回のレコード・アカデミー賞など、数多くの受賞がある。作曲家としても世界各地の現代音楽祭に参加し、自作品によるCDも3枚ある。バロックリュート教則本を始め、リュート現代音楽カタログや自作品の出版物もある。2000年には「リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパン」の会長に就任し、日本に於けるリュートの普及に貢献している。さらに音楽家のための禅茶道「楽禅古流」と気功「楽禅式呼吸法」を考案し、能楽を学び、伝統的な日本の精神文化との融合を目指し、現在も国際的に活動を続けている。

なお、佐藤豊彦に関する詳細情報は
リュート愛好家のWebsite「朝歌:CHOKA」に掲載されています。

「朝歌:CHOKA」のHPはこちら


☐佐藤豊彦演奏の最新CD


SESERAGIせせらぎ〜フランス・バロックのシャコンヌ集〜
佐藤豊彦(リュート)
使用楽器:カナダの製作家リチャード・バーグ氏による2014年作のフランス式リュート(11コースのバロックリュート)
使用弦:アメリカのガムート社とイタリアのユニヴァーサル社のガット弦

レコード芸術2017年12月号 特選盤
◇(前略)佐藤さんご自身執筆の解説には、「(ここに収録された楽曲には)<ナイアガラの滝>を連想させる様なダイナミックな曲は無く、どちらかと言うとすべてが『せせらぎ』に近い曲」と記されている。
 シャコンヌと仏教思想との玄妙な符号を説かれる佐藤さんは、一つ一つの音に生命を与え、強靭な訴えをもって迫られる。点の連続であるリュートという楽器から、大きな意志をもった音の流れが湧きだしてくるのである。確かにそれは<ナイアガラの滝>ではないにしても、迫力は<ナイアガラ>に劣らない。
 とくに佐藤さんが得意とされる音楽の造形力がここでも遺憾なく発揮され、もともと構成性を特徴とするシャコンヌの本質を鮮明に浮かび上がらせている。「シャコンヌ」を核に「せせらぎ」の音で始まり終わる今回のCDは、佐藤さんがおのれ自身を知りぬき、その信条を反映させた企画であり選曲である。(皆川達夫 レコード芸術2017年12月号より)


De Missione Musicorum 音楽による宣教の旅                  (2016.11.3終了)
後援 奈良県、奈良市、駐日スペイン大使館、日本ヴィオラ・ダ・ガンバ協会


今回共演する坂本龍右とジョアン・ボロナート・サンスは、それぞれの音楽的な情熱とお互いの国の音楽文化についての強い思いにより結束した。1582年(天正10年)に九州のキリシタン大名の名代としてローマへ派遣された天正遺欧少年使節が日常的に触れ実際に演奏したであろう16世紀のポルトガル、スペイン、イタリア音楽を、それぞれ複数の楽器で演奏し、またそれに合わせて自らも歌い、様々な組み合わせによる音楽の対話を実現する。こうした試みはヨーロッパでも例が少ない。

坂本龍右 (ビウエラ・ダ・マーノ、ビウエラ・ダ・アルコ、リュート、声楽)

ジョアン・ボロナート・サンス (チェンバロ、オルガン、歌)




 お客様のご感想(アンケートより)


●お二人の演奏とは思えない響きと豊かさで、ありがたい時間を過ごせました。

●本当に素晴らしい。このひと言に尽きます。個々の音楽はもちろん、演奏会全体がひとつの物語になっていて当時の人々のざわめき街の喧騒までが聞こえてくるようです。

●天正使節団のコースを辿った曲の演奏は興味があった。

●テナーとバスの声がとてもよくあっていた。お二人が楽器を次々と変えながら弾いて歌われたのに驚嘆しました。特に手ふいごのオルガンとビウエラアルコが人間に近い音色なので4人で歌っているようでとても良かったです。古い宗教曲が好きなのでとてもうれしい演奏会でした。すばらしかったです。

●とても素晴らしい演奏でした。これまでリュートとガンバの「二刀流」でしたが、今回は歌もあり、演奏会の企画、プロデュース、まさにマルチタレントですね。

●今日の演奏会はとても素晴らしかったです。私も最近フランス初期バロックの合唱を始めてお二人の響きの調和が何と表現したらいいのか・・・。とても感動しました。良い時間をありがとうございました。

曲 目:アネリオ作曲「テ・デウム」/ パイーヴァ作曲「第五旋法のオブラ」/ バルデラバーノ作曲「王宮のババーナ」/ ビクトリア作曲「バビロン河の流れのほとりで」/ サクラメンタ提要(長崎刊)所収の聖歌 / 口承によるオラショ「ぐるりよざ」/ ナルバエス作曲 聖歌「オー・グルリオーザ・ドミナ」に基づく七つの変奏 / 他

演奏の趣旨
 日本での16世紀後半〜17世紀における西洋音楽の発展は、イエズス会による布教活動と、天正遣欧使節によるユニークな音楽活動の両方に多くを負う。今回共演するジョアン・ボロナートと坂本龍右は、それぞれの音楽的な情熱と双方の国の音楽文化についての強い思いにより結束した。
 歴史的な音楽上の事実のみでなく、互いの好奇心が、遣欧使節が日常的に触れ実際に演奏したであろう16世紀のポルトガル、スペイン、イタリア音楽のリサーチへとかきたてた。今回演奏するプログラムの制作に際しては、イエズス会士が遣欧使節の日々の活動に同行して詳細に記録したラテン語・伊語・葡語・西語・日本語の一次資料を自ら参照した。
 曲目に劣らず重要なのが演奏上のアプローチである。天正使節たちが実際に行った演奏の記録にも触発され、それぞれ複数の楽器の演奏し、またそれに合わせて自らも歌い、様々な組み合わせによる音楽の対話を実現する。こうした試みはヨーロッパでも例が少ない。
 さらに人間の歴史における「生けるもの、そして変わりゆくもの」にも目を向け「隠れキリシタン」によるオラショの実践にまで広げる。1613年の禁教以来、九州の隠れキリシタンたちが口伝によってのみ唱えてきた讃美歌は、音楽的・文化的遺産の一部を成しているのだ。この公演は2016年の4月及び5月に、バレンシア大学を含むスペインの三カ所で行われ、いずれの公演も好評を博している。 
坂本龍右

プロフィール

坂本龍右 Ryosuke Sakamoto (ビウエラ・ダ・マーノ、ビウエラ・ダ・アルコ、リュート、声楽)
奈良出身。東京大学文学部(美学芸術学専攻)卒業。2008年、スイスのバーゼル・スコラ・カントルムに留学し、リュートをはじめとする撥弦楽器をホプキンソン・スミス氏に師事、2011年に優秀賞付きで修士課程を修了。並行して、ルネサンス期のヴィオラ・ダ・ガンバをランダル・クック氏、通奏低音理論をイェスパー・クリステンセン氏、声楽をアルムート・ハイパリン氏、記譜法理論をヴェロニク・ダニエルズ氏にそれぞれ師事する。同校に新設されたルネサンス音楽科に進み、アン・スミス氏にルネサンス音楽理論を、クロフォード・ヤング氏にプレクトラム・リュートを師事し、2013年に修了。同年ラクィラ(イタリア)で行われた国際古楽コンクールにて第1位ならびに聴衆賞を得る。在学中より多彩なアンサンブルに所属し、ウィーン古楽祭、ヨーク古楽祭、ユトレヒト古楽祭などに出演するほか、録音も自身のソロCD「Travels with my Lute」(英グラモフォン誌推薦盤)を含め、数多い。リュート奏者としては自身が中心となって結成した「イル・ベッルモーレ」の他、イングリッシュ・コンソートの編成による「クィーンズ・レヴェルズ」、リュート・カルテット「ディライト・イン・ディスオーダー」などのメンバーである。これまでに、フランス・ドイツ・イギリスの各リュート協会からソリストとして招聘を受けている。
公式サイトhttp://ryosukesakamoto.com/ 


ジョアン・ボロナート・サンス Joan Boronat Sanz(チェンバロ、オルガン、声楽)
アリカンテ出身。バルセロナ音楽院、バーゼル音楽院においてオルガン、チェンバロ、通奏低音を学ぶ。スペインをはじめヨーロッパ各地の古楽祭に出演。好奇心旺盛かつ広い知見をもつ奏者として、アンサンブルにおける通奏低音の詩的・修辞的な演奏の可能性を追求し、その興味は鍵盤音楽のソロ演奏の起源の探求にまで及ぶ。ソリストとしての活動のほか、チェトラ・バロック・オーケストラ(アンドレア・マルコン指揮)、コンチェルト・ケルン、ムジカ・フィオリータなどの著名な団体に通奏低音奏者として参加している。自身による教授活動、通奏低音の実践に関する研究に加え、劇場や視覚芸術分野とのコラボレーション多数。現在は、出身校であるバーゼル音楽院の公式伴奏者を務める。
公式サイトhttps://joanboronat.wordpress.com/



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